2015年 12月 06日
バッハの無伴奏チェロ組曲 |
当時はチェロを弾く人は必ずこの曲集にチャレンジするものだと思っていた。
実際はそうでもないみたいだが。
この曲集は困ったことに、バッハの自筆譜が残っていない。
写本がいくつか残っていて、中でも有名なのが妻のアンナ・マグダレーナ・バッハによるものだ。
夫婦は筆跡がかなり似ているので、長いことこれがバッハの自筆譜だと信じられていたらしい。
問題はアンナ・マグダレーナが旦那の楽譜をどれだけ正確に写したかということ。
音符はだいたいOKのようだが、問題はアーティキュレーション。
例えばCMでも使われたりして有名な第一番のプレリュードの冒頭、いわゆる原典版ではこうなっている。
だいたいの演奏家はこれに従っている。デュ・プレもヨーヨー・マも。
だけどこれが弾きにくい。
どうしても各小節4番目と12番目の十六分音符が大きくなってしまう。
こうなっている版もある。
このほうが音が途切れずゆったりとした波の動きのようなイメージを表現できるということのようだ。
だけど弓が足りなくなったりして、これはこれで難しい。
私が最初に買ったのはピエール・フルニエの版だがこうなっている。
これも弓の返しが少ないので、大きな音は出しにくい。
だからコンサート・ホールでの演奏というよりは録音スタジオ用のアーティキュレーションだと批判されたこともあった。
大学生の私はそんなめんどくさい議論は知らず、このバージョンでひたすら練習を続けた。
実際慣れると弾きやすい。
ところがこの慣れるというのが曲者で、要するに悪い癖がついてしまうということだ。
普通の演奏家のようには弾けなくなってしまった。
フルニエ自身はレコーディングでも演奏会でもこの版のようには演奏していない。もっとオーソドックスな、原典版などに近い弾き方を採用している。
ひどいじゃないか…(怒)。
昨年だったか、NHKの音楽番組で堤剛氏がこの曲を演奏された。
堤氏といえば桐朋学園大学特任教授であり日本チェロ協会会長でもある方です。
私が生まれて初めて聴いたプロのチェリストでもありました。
この堤氏が演奏されるというので、どんなアーティキュレーションで弾かれるのかと興味津々で見守った。
なんとこういうふうに弾かれた。
このめんどくさい問題を超越してしまわれたのです。
会長さんがこう弾いているのだから、もう何でもありです。
ちなみに私は個人的にはこういうのもありかと思っています。
あるいはこういうのとか…。
発症当初から今日までの節目になるような診断や治療に関する記事へのリンクを以下に張り付けておきます。
抗がん剤治療第3クール
抗がん剤治療第4クール
抗がん剤治療第5クール
抗がん剤治療第6クール
コメントお待ちしてます!
by domani2015
| 2015-12-06 14:47
| チェロ
|
Comments(2)
Commented
by
hideonoshogai at 2016-01-08 05:53
おはようございます。ほんとにいろんなアーティキュレーションがありますね。なんだかウェルナーかドッツアウアでいろんなボーイング練習をさせられたのを連想してしまいます。でも、どんな弾き方で弾いても、素晴らしい音楽になってしまうところがこの曲の奥深さと魅力ですね。私はずっと原点版で弾いてましたが、今年はいろいろアーティキュレーションを変えて弾いてみたいと思いました。記事アップしてくださりありがとうございます。
0
Commented
by
domani2015 at 2016-01-08 21:59